昔は概算で税金を計算していた?

裁判でも争われた概算経費率

個人の事業主さんと話をしていて、よく話題に出てくる概算経費率。「私の事業の業種は○○だから、経費率は○%なんですか?」という話をされます。私の知る限り概算経費率というものは税法の条文には載っていません。しかし、調べたところ最高裁昭和52年12月19日第二小法廷決定に、「営業庶業等所得標準率表」というものが出てきました。

裁判では何が争われたの?

最高裁は、大阪国税局が事業所得者に対する課税事務を行う際の推計等の資料とするため作成した「営業庶業等所得標準率表」及び「所得業種目別効率表」は、国家公務員法100条1項にいう「秘密」にあたる。と決定しています。どうやら、公務員である税務署の職員が、社内文書であった「営業庶業等所得標準率表」及び「所得業種目別効率表」を一般人に漏らしたことについて、国家公務員法の守秘義務違反で刑事罰をうけた判例ですね。

かつては、概算経費率で確定申告をしていた?

色々な情報調べると、かつては個別通達で、印税及び原稿料は30%、科学者の印税及び原稿料は一律44%を経費にできるなどあったようです。また、税務相談会などでも経費率表は使用されており、昔は広く知れ渡っていた情報のようです。ただし、税務署の社内文書であり、法的な裏付けはなかったため、実務的に概算経費率を使用していても税務署からはクレームがこなかった。というのが正しいところなのでしょうか。

概算経費率を認めたら、経理をしなくなる?

最高裁は、概算経費率表を公表すると、青色申告を中心とする申告納税制度の健全な発展を阻害し、脱税を誘発するおそれがあるなど税務行政上弊害が生ずる。としています。確かに、概算経費率で確定申告してもいいなら、面倒な記帳なんて。。っと考える人も多いでしょう。正確な記帳を要件とする青色申告制度に挑戦する行為ですね。

もし、概算経費率を使用したら?

どうせ税務署は概算経費率で税務調査対象を決めてるんでしょ。ということで概算経費率を使った場合どうなるかというと、実際の経費に基づいていない以上、正しくない確定申告として更正の対象となります。実際、平成26年には郵便局の保険外交員が手当の一定割合を経費としていたことなどにより、申告漏れを指摘されています。かつての概算経費率44%をめどに経費を水増ししていたのでしょうか。とにかく、現在では、納税者が税務署の内部文書であった概算経費率を使用すると、税務行政上弊害が生ずるので罰せられるのです。

今でも一部概算経費率が認められています。

医院、歯科医院などについては、社会保険診療報酬が年間5,000万円以下の場合、概算経費率によって所得計算をすることができると措置法第26条で定められています。また山林所得には、概算経費控除という経費の計算方法が認められています。そして忘れてはいけないのが、サラリーマンの給与所得控除。やはり、サラリーマンからは税金を天引きする方法が最も効率的な方法なのでしょうか。。

税の徴収コストの最小化と脱税の防止

納税者側の税の支払コストを下げるには、概算経費を導入するのが最も効率でしょう。しかし、納税者が正確に帳簿を記載し、正しい納税額を納付する限り、税務署側の税の徴収コストは増加しません。まだ納税者が正確に納税するという青色申告制度の普及過渡期には概算経費率は実務的に認められていたかもしれませんが、青色申告制度が普及し白色申告でも記帳が義務化された現在においては、概算経費率は一部の業種を除いて必要ないもののようです。

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