住所を争って、400億円の利息を取得。

裁判に勝ったら、利息が400億円。

税金の裁判で、納税者が住んでいた場所がどこだったかを争って納税者が勝訴し、利息を400億円取得した判決があります。その裁判とは、かつての消費者金融「武富士」の息子さんが争った裁判、通称「武富士事件」と呼ばれています。

武富士事件とは?

武富士事件とは、創業者夫妻が当時香港に住んでいた長男に、武富士の株式を持っているオランダ法人(いわゆる持株会社)の出資を贈与したことについて争われた事件。当時の税法では、海外に住所がある日本人が、海外の資産の贈与を受ける場合は非課税でした。さらに香港には、相続税・贈与税は存在しないので、長男は税金の負担は一切なしで武富士の株式を取得しました。いわゆる、当時の相続対策で留学中の子女に贈与するという方法がよくおこなわれていました。

問題となったのは住んでいた場所。

長男は、アジア拠点の駐在員役員、かつ、香港所在法人の代表取締役として、3年半の期間情報収集及び投資活動に従事していました。滞在開始2年半後に株式の贈与を受け、香港を生活の本拠として生活していたことから日本での贈与税は申告しませんでした。なぜなら、当時は海外に住んでいる日本人が海外の財産を贈与により取得しても、贈与税はかからなかったからです。その額、約1,653億円。

税務署は租税回避行為と主張。

税務署は、長男の香港滞在は租税回避を目的としたものである。そして住所は創業者の自宅があった杉並区にあったものとして、贈与税の課税価格約1653億円、追徴課税約1330億円の決定処分をしました。

裁判はもめて最高裁まで。

一審の東京地裁で納税者勝訴、二審の東京高裁で国税の勝訴となりました。そして、最終判断の最高裁では、納税者である長男の勝訴。したがって、すでに納付済みの追徴課税額と延滞税額あわせて1,600億円と還付加算金400億円のあわせて2,000億円の還付金を受け取ることになりました。国が主張する租税回避ではない、そして、住所は香港だった。という結論です。

租税回避って?

税金を少なくする方法には、❶節税❷脱税❸租税回避があります。❶節税はもちろん合法ですが、❷脱税❸租税回避となると最悪刑事罰。執行猶予なしで、2年ほど刑務所に収容されるかもしれません。特に脱税に対する刑罰は一罰百戒。脱税と認定されれば、村八分、会社は倒産、残るは借金のみ。では、節税と脱税の中間である租税回避はどのようなものかというと、次の要件に当てはまるものとされています。
(1)私法上は有効であるが、通常用いられない法形式を選択
(2)意図した経済目的・経済成果を実現
(3)通常用いられる法形式による租税法律要件の充足を回避し、税負担の軽減を図る
脱税は、存在していない経費を計上(架空経費)や売上の除外など、わかりやすいものです。一方、租税回避となると、「通常用いられない法形式を選択」というのがキーとなります。武富士事件では、株式を贈与するのにわざわざ香港に住所を移したのか?というところでしょうか。

最高裁は節税と認定。

最高裁は、税法の要件に照らし合わせます。すなわち、住所が香港にあったか、否か。たとえ、それが節税のプランニングであったとしても住所が海外にあったなら非課税だと。結果、税法の規定に基づき住所は香港にあったものとして、贈与税は非課税の判断を下しました。税金の負担は、何人も法律の根拠がなければ租税を賦課されたり徴収されたりすることがないとする、租税法律主義という考え方が支持されました。

現在は税法の改正により贈与税が課税されます。

当然、国は同じような案件でもめないように税制改正を行い、現在では贈与する側される側ともに5年以上日本に住所がないか、日本国籍を捨てて日本に住所を持たないかなどの要件を満たさないと、贈与税がかかります。さらに、出国税が2015年7月1日より施行されたので、富裕層に対する課税包囲網はますます厳しくなっています。

相続税の節税プランニングはリスクがいっぱい。

相続税は、あなたがなくなった時にかかる税金。したがって、将来死んだ時のためにプランを立てていきますが、今つかえる節税方法は税制改正で使えなくなる可能性があります。相続税以外の個人の税目はというと、所得税・贈与税など。これらの税目で節税対策をすれば将来の税制改正は気にする必要はありません。ただし、贈与税の相続時精算課税は、相続時に再度課税し直すので注意が必要です。

武富士の相続対策は成功したものの。。

2011年2月8日の最高裁判決で無事相続対策は成功したものの、現実の武富士はというと2010年に会社更生法の適用を受けています。贈与時には課税価格約1653億円とされていた株式の価値は、ほぼ無価値となっています。結果として長男に贈与した武富士株式はどうなったのでしょうか?

納税資金1600億円って簡単に調達できる?

納税額1600億円。いくら長男でも簡単に調達できる金額ではありません。もっている財産ですぐに換金できそうなものというと、ちょうど贈与を受けた株式。。たぶん全部売却したのではないでしょうか。株式1653億円分贈与を受けて売却、そのまま丸々1600億円を納税。実際どうだかわかりませんが、想像しただけで寒気がします。でも、その後約10年の税務訴訟を経て+400億円の還付加算金をあわせて2000億円現金としてかえってくることになりました。恐ろしいことに、株式を売却せずに保有し続けていたら無価値になっていたのです。

この税務訴訟では勝てましたが。。

ちょっと想像しただけで、この長男には相当の苦労やストレスが押し寄せてきたんだなぁと。なんでこんなことに。。など。そんな時に逃げ出さずに親身になって相談できる人がいたら幸せですね。

電話


 

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